あなたのライブは大丈夫?客の視点から見る悪夢のライブ

雑楽人生マチャブロ

 

NY帰りのミュージシャン、マッシーの雑楽日誌ー

 

 

アーティストはどうしても主観で物事を考えがちですが、お客様なしではライブは成立しません。

まず第一に実際にライブに来てくれるオーディエンスのことを考えるべきです。

 

今日はお客さんの視点で最悪な状況を想定したいと思います。

 

 

皆さんはこんな経験はないですか?

 

久々に同級生からメールが来た。
どうやら最近音楽活動を始めたらしく、来週末ライブがあるとのこと。

 

私はSNSで彼が音楽活動を始めていたのを知っていた。何やら最近生き生きしてるなーと思っていた所だった。

 

その日はちょうど都合がつくし、たまには生演奏というエンターテイメントをつまみに飲むのも悪くない。
音楽好きの同僚でも誘って行こうかな。

 

会場は繁華街の一本裏を入って薄暗い通りの地下ライブハウス。

グーグルマップのナビでも解りにくく少し迷ってしまった。告知にあるOPEN19時を少し回ってしまう。急がねば。

 

なんとかたどり着いて受付ではイカツイ兄ちゃんが仏頂面で気だるそうにしてる。

どうやらチケット代とは別に1ドリンクオーダーしなくてはいけないらしい

その事を不躾に言われちょっとイライラする。なんか感じ悪いなぁ。

 

文句を言いたい所をこらえて中に入ると、他の出演者の演奏がすでに始まっていた。

とりあえずバーカウンターでドリンクオーダーしようとするも、大学生が飲むようなスクリュードライバーとかカシスなんとかってカクテルしかない。

 

とりあえず生一択でしょ。

爆音なので声を張らないとなかなかオーダーが通らない。

ねーちゃんは怪訝そうにビールを注ぐ。

 

出てきたのは

 

 

 

え!?紙コップ!!?

 

500円も払ったらキンキンに冷えたジョッキじゃねーの普通!?

 

 

こんなことなら缶ビールにするべきだったと深く後悔。

 

さらに会場内は薄暗く蔓延するタバコの煙で目が痛い。

落ち着いて同僚と飲みたいが、音が大きくて話も弾まない。

 

まずい酒を飲みながらただひたすら友人の出番を待つ。

周りの客は目当ての出演者が終わるとパラパラと散っていく。

 

待つ事1時間、周りを見渡すと薄暗い密室の中には我々と数人の客(他の出演者?)しかいない。

 

同僚はつまらなさそうにあくびをしている。

寂れたZIMAのネオン管が彼の顔を青く照らす様は、どこか寂しさと退屈さを増幅させる。

 

私はなんだか同僚に申し訳なくなり、先にどこかで飲んでこればよかったのではないか?まだ時間があるなら一旦外に出るべきか?等と思いにふける。

 

そうこうしてると、待ちに待った友人の出番。

彼はステージに中央にある椅子に腰掛ける、少しおどおどした様子でマイクに向かってボソボソ語りかけた。

 

『は、初めまして、〇〇○です。今日は弾き語りでオリジナルとカヴァーを、、、何曲か、、。』

 

あんまり、練習してないんで、、間違えたら、、ご愛嬌という事で、、。』

 

『それでは聞いてください、まず一曲目はI Love ユゥ〜』

 

彼は譜面台とにらめっこしながら、演奏を始めた。

 

私は楽しみにしてた分なんだかむしょーに腹が立ってきた。

 

彼は一度たりとも客席を見ることはなく、一人で気持ち良さそうに譜面に向かって熱唱しているのだ

 

曲が終わり、彼は言った。

 

『すみません、ちょっと2番歌詞間違えちゃいましたね、、、テヘヘ。では次の曲はオリジナルで〇〇。』

 

私の心の中で何かが蠢く

 

おい!

 

 

 

テヘヘじゃねーよふざけてんのか?

 

これはどういう事だ?私は貴重な時間と金を払って彼の一人発表会を見に来たのか?

同僚もイライラしながらスマホでゲームをしている。

 

ムズムズしたなんとも言えない感情が湧き上がってくる。

 

粘っこい歌声と、ジャリジャリしたアコースティックギターが無駄に爆音で響き渡っている

オリジナルソングはどうやらラブソングのようだがなかなか耳に入ってこない。

 

なんだろうこの気持ちは。

 

嫁とは最近うまくいってない、仕事でも上司にこき使われ、残業代もまともに貰えない。
ストレスで頭もだんだん薄くなって来た。

 

唯一の楽しみは2chで匿名のやりとり。
何も変わらない毎日を繰り返して生きるだけ。

 

彼は音楽を始めてから生き生きとしている、

 

もしかすると音楽が私にも何かのきっかけを与えてくれるかもしれない。

少なくともそういう淡い期待があってここにやって来た節もある

 

 

 

それが、なんなんだこれは。

 

貴重な週末の夜に高い金を払って得たものは、

 

ドブ臭い密室でまずい酒と自己満一人カラオケ鑑賞。

 

 

私は自分では気づかないほど怒っていた。

 

 

WTF!
俺の金を!!
俺の時間を。俺の青春を返せ!!!

 

 

私は叫んでいた。
それは無意識の出来事だった。

そしてもう二度とこの場に来ることはないだろう。

 

私たちは気晴らしに夜の街に繰り出すことにした。

 

 

 

 

 

 

如何でしょうか?

 

これはあくまでフィクションで極端な例ですが、これに似たような事例はよくあるのではないでしょうか。

一般的にライブを見に行くって結構めんどくさい事が多いです。

来てくれたお客さんは我々の予想以上に時間、お金、または何かを犠牲にしてライブに来てくれてます。これは実際凄い事です。

 

譜面を見ながらの演奏は賛否両論ありますが、僕は基本的にはオススメしません。

プロもやっているから大丈夫とか、ジャズ、クラシックでは云々という声はありますが、基本的にライブパフォーマンス中に譜面を見るのは演者側の都合でしかないです。
場合によってはお客さんに練習不足を連想させたり、譜面台で顔が見えない、というようなマイナス要素になりかねます。

 

また箱側の話では全国で軒並み潰れてるライブハウスはこういう雰囲気ではないでしょうか。

 

今や大概のライブハウスはミュージシャン相手の商売をしてて、一般客のためのサービスではなくなっています。

完全に貸しホールとして割り切っているなら、それはそれでいいのですが、一般客を遠ざけてしまう。

 

音響システムやブッキング、ノルマ徴収とかの前に、本当に大事なのはその場を楽しみに来てくれたお客様ではないでしょうか?いいサービスをできる箱には自然といいアーティストは集まるはずです。

 

マニアによるマニアのための店もいいですが、
普段あまり音楽に触れることのない方々に音楽の素晴らしさを知ってもらえるような場所がもっと増えるべきだと思います。

 

僕は音楽が好きです。

そして少しでも音楽に興味を持ってくれた人たちにこういう経験は絶対にさせたくない

 

僕はロビンや雑楽工房の活動を通してこれからも音楽の楽しみを伝えていきたいと思います。

 

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